ポケネ地上最萌トーナメント外伝(ニセダネ編後編)

 やがて第四試合が終わり、ニセダネは控え室前にいた和紘の前に姿を現した。苑子のことはデータを読んでチェックしていた。最も、和紘の処に辿り着く間に廊下はその話題で持ちきりであったのだが。ニセダネが和紘と会話を交わす…がその時のニセダネの目が笑ってないことに気づく物は誰もいなかった。

 そして時間は少し流れ、Bブロック二回線第二試合恋人の耳はネコの耳VS和紘の戦い。猫耳の萌えによる電波を受け意識を混濁させた和紘に向かってニセフシギダネは叫んでいた。

「お前の萌えはそんなものじゃないはずだッッ 和紘ッッ!!」
 周囲はその時誰もニセダネの心の内を理解していなかったはずだ。ニセダネは希望と言うよりも知っていたからだ。あの歌に接した人間から正気を失わせる事がどんなに大変か。なぜなら、完全な洗脳状態を経験しているからだ…。特に某音楽教師に直接関わったことのある人間であれば尚更だ。既に彼らは限界の精神領域に達しているのだ。

 和紘が昔の世界を思い返していた時に現れていたニセダネの姿と、本当のニセダネの姿は似て非なる物だったからだ。
 和紘は某音楽教師とニセダネの姿を重ねていただけに過ぎない。だがニセダネは某音楽教師とは正反対の存在であった。だからこそ歌の力を代用しているのである。
 全ての事象を利用する。それは今彼女が師と仰ぐ人間の得意な“合理的な”やり方だからだ。

 そして、翼からかけられたことば。それはニセダネの心に残酷なまでにひびく。ニセダネが少し自嘲的に語ってしまった本心。誰もそれには気づかないのだ。その後ニセダネが浮かべた涙も、他者は信頼を受けた人の喜びという意味で捉えるであろう。しかしニセダネにとっては違う。だが、その本心を知る手だてはやはり存在しない。

「彼が歌の力を借りることのないように警戒してくれという話だ。」

 あくまで音楽の世界へ導くためにしか歌を使わない音楽教師から警戒され、ニセダネからも監視の対象になった和紘。なにも知らない和紘や周囲の人々からすれば思いもよらない悲劇であり。関係者からすれば喜劇にしか過ぎない。だが、人々は決して来ないかもしれないその時がくるまで、ニセダネの素顔を知ることはない。眼鏡の奥に潜むそのまなざしの正体を。

 そしてニセダネは次の試合も冷静に観察し、相手の特技の観察をし、主に関西勢相手に解説するのであろう。
 とある組織の監視者という内面を隠しながら…。

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