赤い機神とそれを守る4体の黒い機神。それはある種の計画を秘めた物かもしれない。

 シオンとことはは博司から解放され再び授業に戻るため教室へと歩く。その後ろを音もなく付いていく博司。
「…なんでこうなるんでしょうね。」
「諦めろ。次は田原本先生の素敵な必修講義だ。嫌でも先生は付いてくる。」
 苦笑いしながら後ろを無視するシオン。その横でにやにやしていることは。その光景が教室まで続けばそれはそれで良かったと思われるが、続かないのが話の常である。突如二人の前に躍り出た博司は、シオンとことはを制止させた。
「先生、いきなりなんですか?」
「覚悟した方が良い。君たちは私と同じように重要な存在だからな。」
 突如博司とシオンとことはの周りを黒服の男達が取り囲んだ。
「ちょっと、ここの警備はどうなってんの。一応私学なんでしょ!!」
 シオンの言葉に応える物はいなかった。

 ホツマはゆっくりとシェイクを飲んでいく。文月の話は正気をいささか逸脱する部分があったが、その辺りは無視していた。
「世界征服したってなんの意味があるんでしょうね。あの方達は。」
「あの人は真面目に関西とこの国の事を考えて動いてるんですわ。動き方は無茶やけどね。」
 重要な部分をどことなく避けているような文月の言葉をいぶかしげに思いながら、ホツマは話を聞いていた。
「そもそも、機神を構築出来るだけの力があったらあんな物をわざわざ作らなくても世界を征服するぐらい出来るでしょう。」
 ホツマの単純な疑問に文月は普通に答えた。
「ん?そりゃ簡単や。世界をぶっ壊さないために決まってるやないか。」
「はぁ?」
 ホツマの驚きにも文月は平然とした表情である。まるでそれが当たり前という顔である。
「僕らの能力は強すぎて、まともにやり合ったら大陸なんぞ軽く吹っ飛んでまう。だからこそ僕らは機神を作った。自分たちの力を抑制するためにね。」
 ホツマには文月の力の強さも、博司の力も全くわからない。わからないがそれだけに恐ろしい物だと実感した。
「機神で戦えば力の及ぼす範囲は限られる。力の出せる範囲も限られる。世界を征服したり守るために世界を吹き飛ばすのは都合が悪いからね。せやから僕らは機神を使って戦うんや。」

「田原本博司とその使徒達ですね。能力を使った戦闘実験は実に見事ですが、そのままにしておくわけにはいきません。」
 じわりと狭まる包囲網。三人以外は誰も学内の人間が集まらない異質な空気の廊下。
「先生、彼らは一体何者なんですか?」
「これをきり抜けたら後で幾らでも教えてあげますよ。」

 博司達の前に別の戦いが始まりそうであった。

続く

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