不思議な力を持つ二人の男、彼らが本当に公言しているような目的で機神同士の戦いを続けているとは思えなかった。その事実をホツマが知るにはまだ時間が必要であった。

 シオンやホツマやことはがそれぞれの時間を過ごしていく横で、色々な人間が又それぞれの時間を過ごしていく。

「あっちで誰か暴れてる・・・ウザイ・・・。」
 高さ20m近い大樹の10m位にある中心部、うろに構築されたあるはずのない豪邸の一室のような空間。無論この大樹どころかそれを取り囲む鬱蒼とした森林も本来ならばあるはずがない。
「私の力は貸すからこの世界で目障りな力を使わないでと言ってるのに。吐き気がする・・・。」
 その一室の中の片隅で体育座りをした格好で人目を阻むように顔を長髪で隠した少女。その横でだらしなく座って女性ではなくて正面をただ見つめる青年。
「仕方ないよ。河内の人間は君の存在を理解してるけど、他はそうじゃない。だから君は彼らの懇願を受けて計画に賛助した。」
 隣で人間全体を唾棄する呪詛を呟き続ける少女に青年は首を振るように淡々と語る。
「その時点で君は無関係じゃない。だからこそ全てが終わるまでは君は耐えないといけないんだよ。」
「私があの計画に賛同したのは気持ち悪い人間の気持ち悪い力の発露を無くすためだ。なのに力を使う。私の頭に直接響く力の波動。ああ、気持ち悪い。」
 人間を嫌悪し、己の力の故に人間を更に拒絶する所まで追いつめられ、隠居と呼ぶのが生やさしいような異空間への別離を望んだ少女。彼女は又、同じように力を持つ人間と関わっていた。文月が引きこもりと呼んだ南河内の能力者は、この幻想の森林の中で唯一の少女の理解者と共に時が来るのを待っていた。それは彼女も機神を誕生させた協力者だったからである。

「まだ、準備は整わないのか?相手は既に模擬訓練の段階まで進んでいるんだぞ。せっかく頭を潰しにかかってるのに一番の脅威に騒がれたら何もならない。」
「もうじきです。何事も完璧に近づけないとね。」
 そして、博司やシオンやことはを襲撃した人々を命令した人物達も又何か次の行動を企んでいるようであった。
 彼らの背後には鋼色の鈍い光を放つ機神が何体もそびえていた。

 そしてシオンとことはと博司のトリオと、ホツマと文月のタッグが機神で対峙する時、別の現実が明らかになる。

第二章 日常の揺らぎ

この奇妙な世界で私は己を直視する。

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